ビア・セラー・トーキョー

Beer Cellar Tokyo


以下は雑誌inCiderJapanの第11号に掲載された記事です。


東京都狛江市の住宅街に建つ薄いピンク色の建物は、駅から徒歩10分、前を通る人々が大きなガラスの窓から中を覗けるような造りだ。実際に中を見てみると、クラフトビールとサイダーが陳列された、明るく光る冷蔵ショーケースと、立ち飲みができるバーカウンターが視界に飛び込んでくる。さらに、小売販売されているビールやサイダーがタップにも繋がれており、その場で生でも飲めることがうかがえる。奥の方へ視線を向けると、驚く方もいるかもしれない。ビール醸造所が備わっているではないか。

この醸造所は「和泉ブルワリー」で、手前のタップルームは「Beer Cellar Tokyo(ビア・セラー・トーキョー)」だ。どちらも近所に住む和泉俊介氏が運営している。実は和泉氏は、平日はサラリーマンでありながら、週末にはプロの醸造家に姿を変える。ちなみにどちらの施設も最近3周年を迎えたことから、地元民やビールファンたちの間で安定した人気があるのだと分かる。

さて、Beer Cellar Tokyoのストーリーを知るためにはまず、和泉氏がこれまでどのようにビールとの関わってきたのかを理解しなければならない。遡ること20数年、当時大学生だった和泉青年は、石川酒造のペールエールを飲んだ時に、「I was thunderstruck(サンダーストラック)」と、まさに稲妻が走るような衝撃を受け、ハマっていったのだという。

2015年には、和泉氏はすでに長い間生物医学製薬会社に勤めており、ほど良く幸せに暮らしていた。しかし、まだ何かが足りない、もっと何かをしたいと思った彼は、American Brewers Guild Brewing School(アメリカン・ブルワーズ・ギルド・ブルーイング・スクール)に入り、ビール醸造を学ぶことにした。その一環で米国オレゴン州ポートランドへ渡り、今はもう廃業しているThe Commons Brewery
(ザ・コモンズ・ブルワリー)で研修を行い、醸造スキルを磨いた。

帰国後、自身の醸造所を開くことを決意した和泉氏は、日本のクラフトビール業界では広くリスペクトされ、ポートランドからクラフトビールを輸入しながらビール醸造機器も取り扱い始めていた、青木栄一氏に助けを求めた。2017年には、2人でポートランドを訪れ、最新の醸造所とその設備を視察した。その時、青木氏は和泉氏をレヴェレンドナッツ・ハードサイダー社のサイダリーとタップルームへ連れて行った。当時を思い出し「サイダーがとにかく沢山ありました」と和泉氏は目を輝かせて話す。「しかも、全部違って、全部美味しかったです。サンダーストラック2回目!」

同年、青木氏のサポートもあり、和泉氏はBeer Cellar Tokyoを(青木氏のオリジナルショップ、北海道のBeer Cellar Sapporoをモデルに)オープンした。同時に、5bblサイズタンクの醸造システムを備えた醸造所を建設しながら、ビール製造免許の交付を待った。やがて、全ての準備が整い、Beer Cellar Tokyoと並んで和泉ブルワリーは営業を開始した。

現在、Beer Cellar Tokyoは木村渓佑氏と平野貴啓氏によって運営されている。10ものタップには和泉氏が造るビールが4〜5種類と他社のビールが4種類繋がれており、サイダー専用にも1タップ設けられている。価格はサイズとドリンクのチョイスによって異なるが、大体、ハウスビールのMサイズが650円、Lサイズが900円で販売されている。輸入のゲストビールはMサイズが平均850円、Lサイズが1250円となっている、また、売り切れていなければドリンクと一緒にソーセージも注文できる。

ちなみに、和泉氏が醸造するのがもっとも好きだというビールはセゾンである。ビールドリンカーはこれがどのようなスタイルか想像できると思うが、セゾンは和泉氏の研修先、ザ・コモンズ・ブルワリーのトレードマークスタイルだったため、彼もその影響を受けているのだ。タップリストにも必ず1〜2種類はセゾンが載っている。(私も大のセゾン好きなのだが、ひいき目なしに、和泉氏が造るセゾンは一流だといえる)。セゾンは、ドライであり炭酸を楽しむことができ、フルーティーな味わいなのでビール界ではサイダーの従妹のようなポジションだ。なんとなく和泉氏がサイダーを好きな理由が分かる気がする。

実は、和泉氏は時々サイダーを造ることもあるのだが、その時に使うのがセゾン酵母である。今年のはじめ、青森県のもりやま園から及川貴史氏を招き、一緒にコラボレーションサイダーを醸造した。これまでのサイダー醸造で、いくつかの違う種類のりんご果汁を試したことがある和泉氏は、これからも自分にとってベストな組み合わせを探求したいと意欲を見せている。

また、コロナウイルス蔓延前には、Beer Cellar Tokyoでは不定期に小規模なサイダーセミナーを行っていた。店で販売されているサイダーについて、購入前にお客様に学んでいただける貴重な機会だった。現在同じようにセミナーを開催するのは難しいが、状況が良くなったらまた行ってくれるだろう。

Beer Cellar Tokyoは、小田急線の喜多見駅と狛江駅の両方から歩ける距離にあるが、個人的には喜多見駅からのルートの方が簡単な気がする。近くに用事がある際や、立ち寄る余裕がある場合は、少し迂回してでも訪れる価値がある場所だ。店自体は小さく、立ち飲みスペースのみとなっているが、酒飲み場特有の空気と雑音に心地よくリラックスしながらパイントを楽しめるだろう。急ぎの場合でも、パッと入って冷蔵庫に並ぶ商品を選ぶか、タップからグラウラーに好きなビール又はサイダーを入れてもらうことができる。

まさに、ローカルな店という雰囲気がとても愛すべきポイントだ。店に出入りする客もさまざまであり、おひとりさまや友人同士、カップルや夫婦(時にはベビーカーや子供も一緒に)、あるいはサイクリングや釣り終わりのグループなど(多摩川が近くにあるからだろう)で店内が賑わう。

Beer Cellar Tokyoはゆったりできる、カジュアルでありつつ温かい、おすすめの場所だ。

Beer Cellar Tokyo 営業時間
土・日 11:00〜20:00
月 定休日
火〜金 16:00〜21:00

BEER CELLAR TOKYO
〒201-0003 東京都狛江市和泉本町1-12-1 1F
TEL: 03-5761-7130
http://www.beer-cellar-tokyo.com/

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