故郷の美味しい「ザイダー」

Zaida by Ambassador Paul Madden

以下は雑誌inCiderJapanの第7号に掲載された記事です。
作家:駐日英国大使 ポール・マデンが


私の故郷は美しい田園風景が広がるデボン州です。いわゆる英国のウェストカントリーといわれるこの地はサイダーの産地としても有名で、子供の頃、近所に美しいりんご園がありました。日本の方々がブリティッシュスタイルのサイダーの良さに気づいてくださっていることを知り嬉しく思います。

若い頃、私や友人達はビールよりサイダーを好む傾向がありました。暑い日のよく冷えたサイダーは、何かしらリフレッシュさせてくれる感じがします。気温が低い日には、ビールと同様に常温が美味しいです。イングランドには甘口から辛口までバラエティー豊かなサイダーが揃っています。「ウェストカントリー」の農家の中にはオリジナルのスクランピーとよばれるサイダーを造っているところもあります。これは通常のサイダーより辛口かつ高アルコールで、かつては農業に携わる労働者が畑で飲んでいました。あまりにも強いので量はなかなか飲めませんが、味は確かです。

りんごは万能な果物で、種類も豊富です。大先輩の外交官であるアーネスト・サトウは退官後デボンに住んでいましたが、りんごの大変な目利きだったそうです。彼の日記には多様な味、形、大きさをした多数の新種のりんごを試したことが記されています。

りんごの甘くてシャリッとしたフレッシュな食感が好きな方は多いと思います。調理用のりんごはメインコースのローストポークの添え物としてや、カスタードやアイスクリームと共にデザートとして供されています。サイダーは単体でも楽しめますが、料理の素晴らしい伴走者でもあり、英国では特に豚肉と一緒に使われます。大変美味なポークシチューもあります。個人的には、とんかつとサイダーの組み合わせは最高だと思っています。サイダーはスパイシーな食べ物にも合うので、カレーライスとの組み合わせも絶妙です。

故郷の友人がCourtney’s of Whimpleという家族経営の会社で自社果樹園を所有し受賞歴もある素晴らしいクラフトサイダーを造っており、この頃は日本にも輸入されるようになりました。多くの食材と同様にサイダーも生産された場所を知っていると、より美味しく感じられます。

30年前、私が初めて日本に住んだ時には英国風のサイダーはあまり出回っていませんでした。最近はよく見かけるようになり嬉しい限りです。日本語でサイダーというとレモネードのようなソフトドリンクを指すことから、この国ではアルコールのサイダーはフランス語から引用されたシードルとよばれるのが一般的ですが、私は敢えて故郷のよび方でザイダーと言っています。これは私の出身地域では「s」を「z」に発音することから来ています。「点々」を足してザイダーというだけで、サイダーより寛いだ響きになります。ほんの少し足しただけでリラックスできるのは、アルコールと同じですね。

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